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お客様の要望は全部叶えるべき?住宅設計で気づいた「提案力」の本質

「お客様は神様」と言うフレーズをよく耳にしますが、お客様の要望を何でもかんでも叶えればいい……とは限りません。

不動産会社で設計職の責任者を務める藤田和行さんは「すべての要望を叶えることが、お客様にとって幸せだとは限らない」と学んだと言います。
ゼネコンから不動産会社へ転職した藤田和行さんに「お客様のための商品とは何なのか」に気づくまでのエピソードを語ってもらいました。


■企業のためではなく、お客様のために設計したい

モノづくりに携わりたくて建築に興味を持ち、新卒で中堅のゼネコンに入社した。
設計担当として17年ほど楽しく働き続けたが、次第に
「もっとお客様のための設計がしたい」
と感じるようになっていた。

中堅のゼネコンでは、決められた仕様の住宅を提案することが多い。
その場合、お客様は複数のハウスメーカーを比較検討し、一番いいと思ったものを選ぶことになる。

設計職として、そこに違和感を覚えるようになった。

私は商品を売るために設計しているわけじゃない。
企業目線で考えれば商品を売って利益を得るためだけど、お客様がその土地でどんな家に住みたいかを想像し、お客様が理想の暮らしを送るために設計するのが私の仕事のはずだ。

それなのに、家が建つ土地や住むお客様に関係なく、決められた仕様の家を作っている。
家、土地、お客様がバラバラに存在し、ミスマッチが起きてしまうのがくやしかった。

■「もっとお客様のために設計したい」

この思いを叶えるために、決められたパターンの商品を提案する企業ではなく、お客様の要望を全て叶えられる住宅をゼロから作る企業に行きたいと思うようになった。

そんな私にとって
「不動産業界を変える」
というスローガンを掲げ、
「お客様から必要とされ、お客様へ尽くします。」
という理念を謡うハウスドゥグループは理想的な企業だった。

ここでチャレンジしたいと思い、転職を決めた。

■お客様の要望をすべて叶えるのは正しいのか?

ところが実際に入社してみると、新築の注文住宅の着工数は伸び悩み、注文住宅より建売住宅が増えつつあった。
仲介業が主流だったハウスドゥグループが、買取再販、売買事業へとシフトしていく時期だったのだ。

これでは理想としていた
「お客様の要望を全て叶えられる住宅をゼロから作る」
ということができない。

ただ、建売住宅に携わっているうちに
「お客様の要望をすべて叶えることが、お客様のためになるとは限らない」
と気づいた。

せっかくゼロから作れる注文住宅を買うなら、だれだって張り切って理想通りの家を作りたいと思うだろう。
「こんな家に住みたい」
と夢が広がり、たくさん願望が生まれる。

でも、お客様の要望に沿ってゼロから作る注文住宅は、オリジナルであるがゆえに建売住宅よりコストがかかる。
物価が上昇している今は特にコストが上がりやすく、かえって選択肢が狭まることもある。
自分の理想通りの家ができたとしても、それが予算の3倍だったら、お客様は幸せにならない。
無尽蔵にお金があるならいいけど、そうではない以上、予算と質のバランスが大事になる。

そしてお客様自身のニーズに合わせてカスタマイズされているため、お子様への世代交代に対応できないことも多い。
せっかくお金をかけて作っても、子どもたちのニーズと合わず継承できないリスクがある。

何でもかんでも叶えたらいいわけじゃないのだ。
だからこそ私たち設計者の出番があり、建売住宅のメリットがある。

設計者の役割は、その土地のポテンシャルをできる限り引き出した魅力ある建売住宅を作ること。
お客様のニーズを踏まえ、コストを抑えながら夢のある空間デザインをし、デザイン性と機能性を両立する。
たとえ小さい土地であっても、生活しやすく住む喜びを感じられる家が設計でき、お客様の要望に沿ってゼロから作る注文住宅よりも満足度を上げられる可能性が十分にあるのだ。

「お客様の要望をすべて叶えることが、お客様のためになるとは限らない」
と気づけたのは、やはりハウスドゥグループに転職したからだと思う。

ハウスドゥ・ジャパンが目指しているのは、お客様に喜んでもらえる商品づくり。
建売住宅であっても、その土地に住むお客様の姿をありありと想像し、時代に合わせた住みやすい住宅になるよう設計している。

こうした特徴が生きているのが、建売ブランド「SHIRO」だ。

SHIROの建売住宅は「土地の魅力を最大限生かすためにはどうしたらいいか?」を考えて設計している。
土地、予算、間取りなどあらゆる条件をクリアしながら、ゆとりある豊かな暮らしを実現する設計を考え、提案するのがすごく楽しい。

去年から設計と施工部門の責任者に就き、建売ブランド「SHIRO」を広げることで「お客様のための家」を多く届けられるように尽力している。

■アンバランスな私でもバランスのいい提案ができる理由

「お客様のニーズと予算のバランスが大事」と学習した一方で、私自身はすごくアンバランスな人間だ。
いわゆる変人だと思うし、周りからもそう言われる。

入社した日、研修を受けていた時のこと。
「まずは電話に出るんやで」
そう言われた瞬間に電話がリンリン鳴り、すぐに出た。
が、何と言ったらいいかわからない。
「あ……」
と言ったまま固まる私を見て、先輩も固まっていた。

特に苦労するのは、コミュニケーションだ。
「ダメなことはダメだから変えましょう」
というように思ったことをそのまま言ってしまうので、ストレートすぎて反感を買いやすい。

だからチームメンバーと意見がぶつかることが何度もあったが、社長の市田さんにはそのたびに救われた。

市田さんはコミュニケーション下手な私を見て
「もっとうまくやれよ」
と思ったはずだが、一度もそうは言わなかった。

私は設計が好きだし、建売住宅の事業も好きだし、会社も好きだ。
だから楽しんで仕事している。

そんな私を見ているからか、コミュニケーション能力不足で悩んでいる私にダメ出しをすることもなく
「藤田を信頼しているから任せているし、最後は俺が何とかするから大丈夫だよ」
と励ましてくれ、おいしい食事をご馳走してくれた。

市田さんはスーパー営業マンだが、土地や時代に合わせたデザイン・空間設計を私より勉強していて
「こういうデザインできないの?」
と聞いてくれるのでいろんな意味で頭が上がらないし、今でも悩んだりつらくなったりした時は市田さんに相談している。

ハウスドゥ・ジャパンには市田さんを筆頭にサポートしてくれる人がたくさんいる。
部署や役職の壁を越えて相談できる先輩がたくさんいて、LINEや電話で連絡するとみんな真摯に相談を聞き、アドバイスしてくれる。
「お前は変わったヤツだから、こうしたらいいよ」
をいう言葉を、ネガティブな意味ではなく、ポジティブな意味で投げかけてくれる。
 だからアンバランスな私でも入社した1年後には主任になり、係長、課長、専任部長とキャリアアップし、今では部長として住宅づくりに関われている。

これからもこの会社で、お客様のためになる住宅を提案していきたいと強く思う。

(藤田和行:売買施工管理部 売買設計部 設計監理部 部長)

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